
愛する弟を失ったコーイチは失意の日々を送っていたが、高校で初めて友達と呼べる仲間たちと出会った。しかし、ある朝目覚めると、5人の仲間と出口のない部屋にいた。「嘘神」の声が非情なゲームの始まりを告げる。ルールは7つ。しかし、嘘神の言葉にはひとつだけ嘘がある。与えられた水と食料はわずか。仲間の命を奪って脱出するのか、それとも……。若き新鋭、驚愕のデビュー作!
第16回日本ホラー小説大賞長篇賞受賞作。
気がつくと出口のない部屋に閉じ込めらていた高校生の男女6人が、部屋から脱出するため命を賭けたゲームをすることになる、というストーリー。
『SAW』『CUBE』系のソリッド・シチュエーション・スリラー(ホラー)。
この手の作品は好きでよく読むのだけれど、"アタリ"と思えるに出会ったことはほとんどない。なので、読む際は極力期待しないよう心がけているのだが、本作は
非常にハードルが高いことで知られる日本ホラー小説大賞の長篇賞受賞作ということなので、少なからず期待した。
けれど――。
――
これはヒドい。
どれくらいヒドいかというと、「三田村志郎って山田悠介の変名ですか?」と思ってしまうくらいにヒドい。要するに、(ゲームのルールを含め)甘すぎる設定、安易なストーリー展開、薄っぺらいキャラ、稚拙な文章――そんな作品である。繰り広げられる頭脳戦のなかには「おっ」と思わせる箇所もないではないが、それも所詮は一瞬の輝きにすぎず、作品全体の評価を底上げるほどのものではない。
――と。
それはもうとにかくヒドい作品なのだけれど、個人的に最も失望したのは、物語半ばでダレること。こういう作品は面白い面白くないということよりもリーダビリティが大事、すなわち短時間で一気に読めるからいいのであって、読者のページを繰る手を途中で止めてしまってはもはや何の価値もない。
というわけで。
山田悠介作品が愉しめる人ならば本作も充分愉しめるのかもしれないけれど、個人的にはただの
ゴミ、そんな一冊。
2009年10月 角川ホラー文庫
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