
実習先の高校で偶然、呪いの手紙を見つけた海老原咲夜。それはサイトで話題になっている"呪い遊び"だった。ある日、同級生の甲田詩織に同じ手紙が届く。同じ頃、咲夜の母校でも暴行事件が続発しており、事件現場でその手紙の切れ端が発見された。始まりは些細なことだった。しかし、一度始まった"実行厳守の死の遊び"はモウ、トマラナイ。
Web上で公開された作品(ケータイ小説)を書籍化したもの。
恨んでいる人物に不幸の手紙を手渡し暴力を振るう。被害者となった者は別の人物に手紙を渡して"倍返し"する。高校生たちの間で流行っているその遊びに教育実習生である主人公も巻き込まれて――というストーリー。
"不幸の手紙"という定番ツールに"倍返し"なる要素を加えたのはなかなか面白いアイデアだし、倍返しを実行する暴力(殺戮)シーンもなかなかにグロテスク。"いじめ"という日常の延長からスタートし、"怪しげな儀式"を経て、最終的には生ける屍が闊歩するぶっ飛んだ話になっていくという物語の流れもホラーの定石ではあるが悪くはない。いかにもケータイ小説らしいまるで深みのない文章も読みやすいことは読みやすい。
ただ――。
人間がまったくといっていいほどに描けておらず、登場人物たちにまったく感情移入できないため、彼らにどれだけ危険が迫ろうとも読んでいて少しも怖くない。
また、ネズミやヘビを使った呪いの儀式、呪法が書かれた本の存在など、物語の性質上きちんと説明されなければならないディティールがことごとくテキトーに処理されてしまっているのもイタい。だいたい、最重要アイテムであるはずの"呪いの手紙"の扱いからして至極いい加減だし。
ラストも表面的な決着こそあるが、根っこの部分については完全に投げっ放し状態。とくに諸悪の根源ともいうべき人物がフェイドアウトしてしまうというある意味予想外の展開には開いた口が塞がらず……。
というわけで。
ケータイ小説界では読者(女子中高生)から圧倒的な支持を得ている作品らしいけれど、所詮はお山の大将、わざわざ書籍化するほどのものではない、そんな一冊。
2006年12月 双葉社
2009年9月 双葉文庫
スポンサーサイト