
地方都市の私立大学に入学した真太郎は、鬱屈した日々を送っていた。極度の奥手ゆえ、憧れる放送部の玉木清実に声をかけられずにいたのだ。やがて、友人で遊び人の孝一の助けで、皆で湖への1泊旅行の機会を得る。だが、同行していた友人が、湖畔で不審な死を遂げた……。直後、清実が豹変、真太郎に淫乱に迫ってきた。なぜ? 古来から土地に巣くうという妖怪「影女」の仕業か? 異才が放つエロティック・ホラー!
書き下ろし長篇。
淫乱で嫉妬深い"女怪"が女子大生に取り憑き、周囲の人間たち(男女問わず)を翻弄する、というストーリー。
紹介文に"
エロティック・ホラー"とあるとおり、エロいシーンが満載。というか、エロ描写の合間にホラーなストーリーが展開するといった按配。
で。
頻出するエロシーンについては、官能小説のようなものを期待するともの足りないかもしれないが、版元が角川ホラー文庫であることに鑑みれば充分満足に足るレベル。
ただ――。
ホラー部分がイマイチ。
妖怪画集『画図百鬼夜行』にも載っている由緒正しき(?)妖怪"影女"を登場させ、そこに誰もが知っている"あの童謡"の新解釈を絡めてみせるアイデアはなかなか面白いし、さらにその先にどんでん返しを用意しているあたりも悪くはないが、いかんせん、この作品には
"怖さ"が足りない。
主人公たちは関係を持った女からいわれた「浮気したら殺す」という言葉にビビりまくっているけれど、その主人公たちがまるで感情移入できないキャラなので、別段彼らが危険に晒されたところでまったくドキドキしないし、著者らしいグロ描写もえらく控えめなので、そちら方面からゾクっとさせられることもない(後半のキャットファイトのシーンなどはあまりにもユルすぎて逆に面白かったけど)。
というわけで。
飯野作品としてはかなりおとなしめ、そんな一冊(まあ、とにかく女と"ヤル"ことだけしか考えておらず、自慰行為を母親に手伝ってもらっている童貞青年、という主人公のキャラ設定など"イッちゃってる"ところもないではないけれど)。
2009年11月 角川ホラー文庫
スポンサーサイト