
ホラー映画評論家・庄内良輔の周囲で、映画関係者が次々と惨殺されていく! しかも『悪魔のいけにえ』『スキャナーズ』など、彼がベスト10に挙げた映画の殺人シーンと同じ殺され方で。動機は山ほどあってアリバイは無い――。庄内は有力容疑者となってしまうが、謎の殺人鬼は、彼自身の背後にも迫っていた。
映画界の裏側をブッタ斬る、伝説の傑作!
長篇。
ホラー映画評論家の庄内良輔(主人公)が憎しみを抱いた人間たちが次々と殺されていく。しかも、それらは庄内の好きなスプラッタ映画の殺戮シーンを再現したかのような酷い殺され方で……という話。
タイトルはいかにもミステリといった感じだし、
スプラッタ映画の見立て殺人、という前代未聞(というより空前絶後)にして掛け値なしに素晴らしい発想を軸にした筋立てもまさしくミステリのそれなのだけれど――。
途中であっさりと犯人の正体が明かされてしまうし、動機に意外性があるというわけでもないので、実際はミステリというよりはホラーと呼ぶに相応しい内容。少なくとも"普通のミステリ"を期待すると肩透かしを食らうこと請け合いである。
ただ――。
本作は犯人が明かされてからの展開がムチャクチャ面白い。とくに、キャラ立ちまくりの最終章はスラップスティックの極みともいうべき代物で、そこで繰り広げられる凄絶な"追いかけっこ"は爆笑もの。
なお。
本作には俄かには信じられない"映画評論家の生態"が描かれているが、巻末解説によれば、その九割は本当のことらしいので、そういう意味でも結構愉しめる。
ちなみに。
本作で"見立て"のモチーフとなっているスプラッタ映画については、作中、簡潔にして"愛"のある内容紹介が随時挿入されるので、そちら方面の知識がない人でも読むのに何ら支障はない。
というわけで。
グロでおバカで愉快な一冊。
1989年4月 扶桑社
2007年8月 光文社文庫
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